適応障害とは、ストレスが原因で心身のバランスが崩れ、社会生活を送ることに支障が生じた状態をいいます。一般的に人は、さまざまなストレスを受け、一時的に落ち込んだり眠れなくなったりすることがありますが、多くは短期間でおさまります。ところが適応障害の場合は、ストレスに対する反応が過剰となり、学校や仕事、対人関係にまで影響を及ぼすようになります。強いストレスがある場合に誰にでも起こりうる可能性があり、うつ病の〝手前〞の状態と考えられています。
適応障害では、次のような症状がみられます。
適応障害の特徴は、ストレスとなるできごとがはっきりしていることです。そのため、適応障害の治療において、基本的に薬物療法からスタートすることはありません。不安やイライラ感が強く、眠れない状態が続く場合に、補助的に薬物療法が選択されることはありますが、まずはストレスの原因を突き止めることを重視します。
適応障害の患者さんがストレスとして感じる原因で多いのは、学校や職場、家庭内での人間関係です。しかも、客観的に「大変そう」「辛そうだな」と思われるようなできごとだけでなく、結婚や昇進といった好ましいできごともストレスの原因となります。
治療では、そのようなストレスをなるべく減らすよう、まずは環境調整を行うことが重要であり、職場の業務内容や人間関係が原因となっている場合には、部署の配置を変えてもらうなど、周囲のサポートも必要です。
環境を変えられない、ストレスの原因から離れることが難しい場合には、精神療法や心理療法、認知行動療法などを行うこともあります。これらの治療法により、環境が変えられない場合でも、患者さん自身がその環境にあわせて思考パターンや行動を変え、適応していく力を身につけていきます。
先に述べたように、適応障害の原因のほとんどは、ストレスによるものです。すると、患者さんはストレスが無い状況では比較的、気持ちがした状況で過ごせるため、ストレスとなる状況を意識的に避ける行動を取るようになる場合があります。
たとえば、学業がストレスの原因となっている場合は不登校になる、職場の業務内容や人間関係が原因であれば退職する、といった具合です。その結果、さらにストレスに対処する力、耐える力を失っていって、症状が慢性化していく可能性があります。ストレスの原因から回避し続けることで、やがて社会的に生活することが困難となり、周囲のサポートが得られない場合はそのまま社会復帰を果たせずに自宅にひきこもってしまう可能性もあります。
するとひきこもりの事実そのものが再就職のハンディキャップとなって、ふたたび社会につながることが容易でなくなります。長期化して中高年、老年期を迎えるケースも増えており、とにかく早い段階で介入を行うことが必要です。
本人が医療機関を受診することが難しい場合は、まずは地域相談支援センターや保健所といった公的機関に相談することで、専門機関につながり、個々のケースに合った援助や医療の提供を受けることが可能です。