医療法人社団 心翠会
精神科・心療内科・内科・訪問診療

睡眠障害

睡眠障害とは

睡眠障害とは、睡眠に影響が出る病気の総称のことです。不眠症や過眠症、睡眠時随伴症などをまとめて睡眠障害といいます。

不眠症とは、なかなか寝付けなかったり途中で目が覚めてしまったりなどの症状が慢性的に続く病気のことです。日本人の約5人に1人は不眠症だといわれています。生活習慣に問題があったりほかの病気が原因で起こったりしていることもあるため、原因を明らかにしたうえで治療を行ってくことが大切です。

過眠症とは、夜にしっかりと眠っているはずなのに日中に強い眠気を感じる病気のことをいいます。食事中や歩行中などに数秒から数分ほど突然眠ってしまうナルコレプシー、一時間以上も眠り込んでしまう突発性過眠症、睡眠不足が慢性的に続くことで日中に眠気が強く出る睡眠不足症候群などが代表的です。

睡眠時随伴症とは、睡眠中に悪夢を見たり歯ぎしりをしたり、寝ながら歩いたり走ったりなど睡眠中に起こる異常な行動や体験のことです。小児期に始まることが多く自然に軽快していきますが、本人や周りに影響が出る場合は治療が行われることもあります。夜驚症やいわゆる夢遊病なども睡眠時随伴症の一つです。

睡眠障害は珍しい病気ではない

成人のうち、約10人に1人は不眠症で悩んでいると言われています。ときどき不眠症の症状に悩まされる方を含めると、成人の約30~50%は何かしらの症状を抱えているのです。

近頃では夜でも営業している店が増えた影響もあり、生活リズムが崩れている方が少なくありません。学校や仕事でストレスを抱えてしまうこともあるでしょう。

睡眠障害は誰でもなる可能性がある病気です。適切な治療を行うことで症状の改善が期待できますので、「なぜ自分だけ?」と考えすぎないようにしましょう。

睡眠障害の原因

〈不眠症の原因〉

不眠症の原因として多いのは、次の6つです。

ストレスは交感神経を刺激して体を覚醒状態にしてしまうため、不眠症を引き起こすことがあります。真面目で神経質な性格の方は、精神的な疲労によって不眠症になりやすいため注意しましょう。

精神的な疲労を軽減するためにも、ストレスを受けない環境を作り、こまめにストレスを発散することが大切です。かゆみや痛みで寝られなかったり、うつ病や統合失調症などの病気で症状が出ることもあるでしょう。

このような場合は、原因となっている病気の治療を行う必要があります。不眠症が続く場合は、眠りの質が悪くなっているだけと思い込まず、ほかに病気がないか検査してもらうことも大切です。

また、カフェインやお酒、薬やたばこの影響で睡眠に影響が出ている方も少なくありません。薬が原因の場合は、服用を中止することで不眠症の症状を改善できます。しかし、服用を急に中止できない場合もあるでしょう。「飲んでいる薬が原因かも?」と感じた場合は、不眠症の症状が出ていることを担当医に相談してください。

たばこに含まれているニコチンには覚醒作用があるため、喫煙すると目が覚めてしまいます。喫煙を続けることで慢性閉塞性肺疾患(COPD)になり、呼吸がしづらくなって睡眠障害を引き起こすこともあるため、喫煙している方は禁煙を心がけましょう。このほか、騒音や強い光、体に合わないベッドなどが原因となることもあります。

〈過眠症の原因〉

過眠症の一つであるナルコレプシーは、体を覚醒させるのに必要なオレキシンという物質がうまく作られなくなることが原因です。特発性過眠症の原因はまだよくわかっていません。今のところ睡眠や覚醒に関わる遺伝子になにか問題があるのではないかと考えられています。睡眠不足症候群は、日頃の慢性的な睡眠不足が原因です。

〈睡眠時随伴症の原因〉

使っている睡眠薬の副作用や、疲労やストレスなどが睡眠時随伴症の原因になると考えられています。また、深い睡眠から中途半端に覚醒してしまうことも原因です。認知症や遺伝などが関係しているケースもあります。

睡眠障害とアルコールの関係性

「アルコールを飲むと寝付きが良くなる」と言って、お酒を飲む方がいます。たしかに、アルコールを摂取すると眠くなってくるため、すぐに眠りにつけることもあるでしょう。しかし、眠りのためにアルコールを摂取するのはおすすめできません。一見するとよく眠れているように感じるかもしれませんが、実はアルコールが体内にあると眠りが浅くなってしまうのです。

飲みすぎた翌日に疲れが残っているのは、体がしっかり休めていないことが関係しています。寝付きがどれだけ良くても浅い眠りしか取れないのなら意味がありません。質の良い睡眠を取りたいのなら、アルコールは控えるようにしましょう。アルコールで睡眠障害を治すことはできません。むしろ症状を悪化させますので、適切な治療を受けることが大切です。

睡眠障害の症状

〈不眠症の症状〉

不眠症の症状は、大きく次の4つにわけることが可能です。

寝付きが悪く何時間も寝られないものを入眠障害、途中で何度も目が覚めてしまうものを中途覚醒といいます。早朝覚醒は起きる予定の時間よりも早く目が覚めて再入眠ができなくなるもの、熟眠障害は睡眠を取れているものの熟睡感が得られないものです。

〈過眠症の症状〉

過眠症では、日中に強い眠気が生じます。ナルコレプシーの場合は数分から数十分程度の強い眠気に襲われ、驚いたりたくさん笑ったりなどの刺激がきっかけで体に力が入らなくなる症状が見られることが特徴です。

特発性過眠症では1時間程度とナルコレプシーよりも症状が長く続き、頭痛や失神などを伴うことがあります。睡眠不足症候群は、普段は3~4時間しか眠らず、仕事や学校が休みの日に10~12時間ほどまとめて寝てしまう方がほとんどです。

〈睡眠時随伴症の症状〉

睡眠中に大声を出したり泣き出したり、寝ながら歩き回ったりなどの症状が見られます。本人は何をしたか覚えていないため、寝ぼけているだけだと思われることもありますがケガにつながることもあるため注意が必要です。

睡眠障害の治療

〈不眠症の治療〉

不眠症の原因となっている疾患が明らかになっている場合は、まずそちらの治療を優先して行います。また、薬を使って不眠症の症状をやわらげる治療も一般的です。症状に合わせた薬を使うことで、質のよい睡眠を取れるようにします。生活習慣が原因となっている場合は、起床や就寝の時間をできるだけ同じにしたり、就寝前にカフェインやアルコールを摂らないようにしたりなどの対策も効果的です。

〈過眠症の治療〉

ナルコレプシーを根本的に治せる方法は今のところありません。しかし、症状が軽い方でしたら夜間に十分な睡眠を取り、お昼に仮眠する時間を設けることで症状の改善が見られることも多いです。症状の程度によっては、眠気を軽減するための薬を使うこともあります。

特発性過眠症の場合も、眠気を軽減して覚醒状態を保つ薬を使用することが一般的です。また、日頃から夜間に十分な睡眠時間を確保するよう心がけることも効果があります。睡眠不足症候群は、慢性的な睡眠不足がそもそも原因となっているため、しっかりと睡眠を取れる生活を心がけることが大切です。

〈睡眠時随伴症の治療〉

寝ながら歩き回ったり周りに危害を加えるような異常行動が見られる場合は、神経の興奮を抑えて落ち着かせる薬や漢方薬、睡眠サイクルを整えるメラトニン受容体刺激薬などが使われます。叫んだり恐怖で起きたりなどが起こる夜驚症は、神経を落ち着かせる薬や抗不安薬などが使われることが多いでしょう。子どもの場合は成長とともに自然と治ることが多いため、必ずしも治療が必要になるわけではありません。

必要な人に、必要な医療を

睡眠障害を抱えている方のなかには、通院が困難だと感じている方もいるのではないでしょうか。過眠症の方は外で急激な眠気に襲われ、道ばたで倒れたり寝込んでしまったりする可能性もあります。

「治療をしたいけど通院するのに不安がある」と感じている方は、在宅医療の利用を検討してみてはいかがでしょうか。自宅に医師が来て診察してくれるため、外に出る必要がありません。

在宅医療を受ける場合は、まず地域相談支援センターや保健所などに相談しましょう。そこから患者さんの希望や症状に合った医療機関やサービスを紹介してもらえます。

医療法人社団心翠会では、ご本人およびご家族が困っていながらも通院が困難な方を対象に、精神科医療を基盤とした在宅医療を行っています。