発達障害とは、脳の機能的な問題により、小児期から幼児期の成長期においてコミュニケーション能力などに特徴的な症状があらわれる状態の総称です。発達障害には、ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群)、学習障害、ADHD(注意欠如・多動症)などが含まれますが、それぞれの特徴が重なり合っている場合も多く、どのタイプにあたるのかを明確に分けて診断することは難しいと考えられてています。また、年齢や環境により目立つ症状が違ってくるため、診断された時期により、診断名が異なることもあります。
おもな発達障害では、次のような症状がみられます。
発達障害におけるおもな治療法は、生活環境の調整です。患者さんが過ごす環境や周囲とのかかわりなどをチェックし、改善できることがあれば対処します。
また、発達障害の患者さんの中でもASDの場合、独特のものごとの捉え方をするため、個々の発達に合わせた捉え方を身につけることで、日々の生活が安定することがあります。このような「心理社会的治療」を試みても効果が現れず、困りごとが改善しない場合は薬物療法を検討することになります。ADHDについても、多動性や衝動性の症状を軽減し、行動をコントロールしやすくする薬物療法が行われています。
また、発達障害の患者さんは、症状の特性により周囲から非難され、生活の中で失敗や挫折を経験するリスクが高くなります。そのため、過剰なストレスやトラウマが引き金となって身体に不調を来したり、不安やうつなどの精神症状を生じたりするため、こうした二次的な問題に対しても薬物療法が検討されることがあります。
発達障害は、一般的に、小児期から幼児期の成長期に発見されることが多いとされています。しかし、なかには成長期には症状が目立たず、学齢期や思春期あるいは大人になってから、学校や職場で問題が目立ってくることもあります。
とくに就職を機に周囲への適応が難しくなるケースが多く、職場において孤立し、しだいにストレスや劣等感や無気力、孤立感、疎外感が募って不安定となっていきます。そこから二次的にうつ病や不安障害、依存症といった精神症状を呈して、最悪の場合はひきこもりとなるケースも少なくありません。
ひきこもりとは、年齢相応の社会経験を積む機会を失うことであり、ひきこもりの事実そのものが再就職のハンディキャップとなって、ふたたび社会につながることが容易でなくなります。長期化して中高年、老年期を迎えるケースも増えており、とにかく早い段階で介入を行うことが必要です。
本人が医療機関を受診することが難しい場合は、まずは地域相談支援センターや保健所といった公的機関に相談することで、専門機関につながり、個々のケースに合った援助や医療の提供を受けることが可能です。