統合失調症は、幻覚や妄想、意欲の欠如などの症状を伴う精神疾患です。くわしい発症原因は分かっていませんが、統合失調症の脳内ではドパミンなどの神経伝達物質のバランスが崩れており、それにより特徴的な症状が生じると考えられています。有病率はおよそ1%、つまり100人に1人の病気であり、思春期から青年期に発症するケースが多いとされています。
統合失調症の症状は、大きく「陽性症状」「陰性症状」「認知機能障害」に分けられます。
統合失調症の治療は、脳内の神経伝達物質のバランスを整える抗精神病薬を用いた薬物療法が基本となります。抗精神病薬は統合失調症の症状を軽快させ、再発予防効果も有するため、ある程度症状が安定しても服薬は継続していく必要があります。
しかし、統合失調症の患者さんは、症状の特性から日常生活や対人関係に支障を来しやすく、周囲から差別や偏見を受けることも少なくありません。症状が強くあらわれている時期には入院治療が必要となりますが、退院して日常生活に戻っても、学業や就労でつまずきやすく、人生に希望を持てない状況に陥っていきます。
そのため最近の統合失調症の治療は、症状軽快や再発予防だけでなく、心理教育や社会生活スキルトレーニングや、作業療法やデイケア、職業リハビリテーションなどを通して、患者さんが社会機能を維持し、自分らしさや人生を取り戻すことをめざしています。
また、統合失調症では、発症して未治療の期間が長いほど、症状が重症化・慢性化することが知られており、なるべく早期に専門的医療につなげることが重要です。
統合失調症の患者さんは自分が病気であるとの自覚に乏しく、心配する周囲を拒絶しがちです。本人が医療機関を受診することが難しい場合は、まずは地域相談支援センターや保健所といった公的機関に相談することで、専門機関につながり、個々のケースに合った援助や医療の提供を受けることが可能です。