医療法人社団 心翠会
精神科・心療内科・内科・訪問診療

双極性障害(躁うつ病)

双極性障害とは

双極性障害は、うつ状態と躁状態が交互に繰り返される精神疾患です。くわしい発症原因は分かっていませんが、遺伝の関与や、脳内でセロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質がうまく調節されず、それにより特徴的な症状が生じると考えられています。有病率は1%、つまり100人に1人の病気であり、男女で発症率の差はほとんどありません。

双極性障害の症状

双極性障害では、安定期のあいまに気分が高ぶる「躁状態」と、気分が落ち込む「うつ状態」が交代で現れます。

うつ状態の時期の症状

躁状態の時期の症状

双極性障害の治療

双極性障害の治療では、気分安定薬を中心とした薬物療法が基本となります。これは、気分の波を小さくし、安定化させるために用いられるもので、うつ状態、躁状態、安定期にかかわらず続けて服用していきます。その他、症状に応じて、抗精神病薬や抗うつ薬、睡眠障害がある場合は睡眠薬を併用します。また、薬物療法によってもなかなか効果が得にくい場合に、脳に電気刺激をあたえる「電気けいれん療法」が行われることもあります。

さらに、双極性障害では、症状の特性から日常生活や対人関係に支障を来しやすいため、患者さん自身が疾患に対する理解を深め、対処法を学ぶための心理・社会的治療が推奨されています。これらは「心理教育」「認知行動療法」「対人関係-社会リズム療法」と呼ばれる治療法で、生活リズムを整え、疾患や薬剤の性質、自身の考え方のクセを理解し、ストレスや対人関係への対処を身につけることが期待されています。

双極性障害の問題点

双極性障害で躁状態になると、患者さん自身はとても気分が良いので、本人に疾患である自覚はありません。うつ状態のときは通院をしても、躁状態になると「これが自分の本来の状態」と考え、治療を受けなくなることはよくあります。ふたたびうつ状態となって通院を再開しても、双極性障害は改善されず、本人にとってコントロールの難しい病気です。

また、躁状態のときは気分が高揚し、つい現実離れした発現や行動をとりがちで、無謀な買い物や計画を実行するだけでなく、周囲の人を傷つけることもあります。逆にうつ状態になると、躁状態のときの自分の発言や行動に対する自己嫌悪も加わり、ますます辛い気持ちとなってしまいます。

こうした躁状態とうつ状態の繰り返しを放置すると、だんだん再発の周期が短くなり、対人関係でのトラブルが増えていきます。トラブルが繰り返されて家庭崩壊や失業、破産といった事態に陥るケースも珍しくはなく、経済的問題から治療を続けることが難しくなったり、経済的問題そのものがストレスとなったりして、いつまでたっても症状が良くならない場合もあります。

とくに、うつ状態がひどくなると「この世から消えてなくなった方が良い」と考え、最悪の事態を招く場合もあるため、早い段階で周囲が協力し、専門医による適切な治療につなげることが重要です。

必要な人に、必要な医療を

本人が医療機関を受診することが難しい場合は、まずは地域相談支援センターや保健所といった公的機関に相談することで、専門機関につながり、個々のケースに合った援助や医療の提供を受けることが可能です。

医療法人社団心翠会では、ご本人およびご家族が困っていながらも通院が困難な方を対象に、精神科医療を基盤とした在宅医療を行っています。