パニック障害とは、突然、理由もなく強い不安感に襲われ、動悸やめまい、発汗、手の震え、窒息感、吐き気といった発作を伴う疾患です。くわしい発症原因は分かっていませんが、パニック障害の脳内ではセロトニンやGABAといった神経伝達物質が不足しており、それにより特徴的な症状が生じると考えられています。有病率は報告によりバラつきがありますが、およそ1~3%と推定されており、女性が男性のおよそ2倍多いと考えられています。
パニック障害では、次のような症状がみられます。
パニック障害の治療には、薬物療法と認知行動療法の併用が有用と考えられています。薬物療法では一般的に、抗うつ薬の一種であるSSRIや、抗不安薬を使用します。また、認知行動療法は、薬物療法と同程度にパニック障害に対する治療効果があることが認められています。
認知行動療法では、患者さん自身がパニック障害という病気について理解を深め、「一人で最寄り駅まで歩いて、普通電車で10分移動し、図書館で本を借りて同じ経路で戻る」といった具体的課題をクリアしながら、症状をコントロールする考え方を身につけ、再発予防をめざします。
パニック障害の発作は、患者さんにとっては「死んでしまうのではないか」と思うほど強いものです。そのような発作がまた起こるのではないかという「予期不安」は、実際に死を招く恐れのある心筋梗塞発作に対する不安と比べても圧倒的に激しく、持続すると考えられています。
また、過去に発作が起きた場所や、起きそうな気がする場所を避けるようになる「広場恐怖」は、必ずしも「広場」が対象とは限りません。電車に乗る、人ごみの中に一人で立つ、美容院、スーパーマーケットに行くなど、恐怖を感じる場所はさまざまです。
また、パニック障害の患者さんは、いつ発作が起こるかという不安のあまり、学校や仕事を辞めるといった行動の変化が起きるようになります。広場恐怖が強くなると、恐怖を感じる場所を避けようとして行動範囲が狭くなり、人間関係や日常生活に支障を来すようになります。外出そのものが恐怖となって、最悪の場合はひきこもりとなるケースも少なくありません。
いったんひきこもりになると、ふたたび社会につながることは容易でなくなります。長期化して中高年、老年期を迎えるケースも増えており、とにかく早い段階で介入を行うことが必要です。
本人が医療機関を受診することが難しい場合は、まずは地域相談支援センターや保健所といった公的機関に相談することで、専門機関につながり、個々のケースに合った援助や医療の提供を受けることが可能です。