医療法人社団 心翠会
精神科・心療内科・内科・訪問診療

強迫性障害

強迫性障害とは

強迫性障害とはばかばかしいこと、つまらないことと頭のなかではわかっていても、強い不安やこだわりを感じる病気のことです。「コンロの火は消したっけ?」「戸締まりはちゃんとしたかな?」と気になり、家に戻って確認した経験は誰しも一度はきっとあるでしょう。

しかし、強迫性障害の場合は家に一度戻っても「消したよね?」「締めたよね?」と不安になり、何度も何度も確認してしまうのです。100人に1~2人が強迫性障害だといわれています。生涯で強迫性障害になる確率は、男性よりも女性のほうが1.6倍高いことが特徴です。

自分自身も周りもただ単に神経質な性格だと思い込み、強迫性障害であることに気がついていない方もいます。逆に自分では何かがおかしいと感じていながら、家族や友人から「心配性なだけ」「気にしすぎ」と言われて治療されていない方も意外といるものです。

強迫性障害の原因

強迫性障害になる原因は、今のところまだはっきりとはわかっていません。アメリカのハーバード医科大学で行われた研究によると、遺伝子や生活環境、大脳皮質や線条体などが関与しているのではとも考えられています。

また別の研究では、強迫性障害を発症している方では物事を回避する傾向が強く、相手から評価されたい気持ちや協調性は低い性格の方が多いことがわかりました。発達障害やチック障害がある方で強迫性障害も同時に発症している方が多いことも知られています。

ただし、現在も強迫性障害の原因については研究中です。確実な原因についてはわかっていないため、今後の研究に期待がもたれています。

強迫性障害の症状

強迫性障害のおもな症状は、強迫観念と強迫行為の2つです。

〈強迫観念〉

強迫観念とは、ある考えが頭から離れないことをいいます。頭ではその考えが不合理だということを理解していても、何度も何度も頭に浮かんでしまうのです。よく見られる強迫観念には次の4つがあります。

汚染恐怖、不潔恐怖

汚染恐怖や不潔恐怖とは、手や物が汚れているのではと感じてしまうことです。細菌やウイルスがついているのではという恐怖心から、何度も繰り返し手を洗ったり、不潔だと感じる物には触れないようになります。手を洗いすぎるあまり、ひどい手荒れを起こしてボロボロになっている方を見かけることも少なくありません。何度も同じ食器用スポンジを使えない、歯ブラシを毎日新しいのに替える、排便後の自分を汚く感じてしまうなどの症状などもよく見られます。

加害恐怖

加害恐怖とは、周りの人に危害を与えたくないと強く思いすぎてしまうことです。何か気になることがあると、「もしかして自分のせいで事件が起こったのでは?」と気になり、ネットニュースを見たり周りに確認したりします。危害を加えたくないと思うあまり、会話をしなくなったり慎重すぎるほど行動に気を遣ったりするなどの行動も代表的です。自分の運転で事故を起こしたらと不安になり、車を運転できなくなる方もいます。

不完全恐怖

不完全恐怖とは、順番やものの位置、均一さや正確性を過度に気にする症状のことです。たとえば本が巻数通りに並んでいないと気が済まなかったり、言葉の意味を完全に理解するまで調べたりなどの症状があります。本の内容よりも言葉の意味が気になり、調べながら読むので読書に苦手意識をもつ方も多いでしょう。服を着たり物事を行ったりする順番に強くこだわる方もいます。

ため込み障害

物を過剰に集め、捨てられず家の中が物であふれかえってしまう症状のことです。一見必要なさそうに見えるゴミでも「いつか使うかもしれない」と思い、捨てることができません。道ばたに落ちている物を見て、「何かに使えるかもしれない」と持ち帰る方もいます。

〈強迫行為〉

強迫行為とは、強迫観念を打ち消すために行う行動のことです。不潔だと感じるものはとことん洗ったり消毒したりし、自分が加害者になっているかもしれないと思えば警察に確認の電話を入れます。戸締まりが気になって何度も何度も確認し、それでも気が済まず外出中に家に戻って再び確認することもあるでしょう。「ここまでしなくても大丈夫なのに」と自分でもわかっているのに、強迫行為をやめることができません。

強迫性障害の治療

強迫性障害を治療する方法には、おもに次の2種類があります。

〈薬物療法〉

強迫性障害そのものを薬で抑えるというよりは、強迫観念を少なくしたり気持ちを落ち着けることが薬物療法の目的です。治療にはSSRIという種類の抗うつ薬がよく用いられます。2018年に行われた研究では、強迫性障害の症状が出始めた時期と症状が落ち着いてきた時期の両方に効果があることがわかりました。また、再発の予防にも効果がある可能性もあるのではないかと考えられています。

〈認知行動療法〉

認知行動療法は、あえて強迫観念を感じる場面に触れてもらい、強迫行為を我慢してもらう治療のことです。戸締まりが心配でも一度確認をしたらそれ以上はチェックしない、手が不潔だと思っても洗わずに我慢するなどを患者さんにできる範囲から行ってもらいます。少しずつ「しなくても大丈夫」という経験を積んでもらうことで、強迫行為をしなくて済むようにするのです。

必要な人に、必要な医療を

強迫性障害をおもちの方は、外出するまでに何時間もかかってしまうこともあるのではないでしょうか。体をきれいにし、順番通りに着替えを行い荷物がきちんと揃っているか、戸締まりはしたかなどを一つひとつ何度もチェックするため、外出するだけでもかなりの時間が必要になります。

外に出るのがつらい、できれば外に出たくないと思われている方は、在宅で強迫性障害の治療を行ってみませんか?

医療機関を受診することが難しい場合、まずは地域相談支援センターや保健所といった公的機関に相談することでその人に合った援助や医療の提供を受けることが可能です。

医療法人社団心翠会では、ご本人およびご家族が困っていながらも通院が困難な方を対象に、精神科医療を基盤とした在宅医療を行っています。