不眠症とは、なかなか寝付けなかったり途中で起きてしまったりなどの睡眠障害が1か月以上続く状態のことです。慢性的に睡眠が十分に取れない状態が続き、倦怠感や集中力低下などの症状も見られます。日本人の約5人に1人が不眠症だといわれているため、とても身近な病気だといえるでしょう。不眠症の方は年齢が上がるにつれて患者さんが増える傾向にあり、60歳以上の方は約3人に1人が睡眠に悩みを抱えて過ごしてます。
しかし、「睡眠時間は取れているから大丈夫」と言われる方が意外と少なくありません。実は、人によって必要な睡眠時間が異なります。また、睡眠時間は取れていても睡眠の質が悪く、十分に体を休められていない方も多いものです。どれだけの時間眠ったのかよりも、寝たりないと感じない質のよい睡眠をしっかり取れているかどうかが大事になります。
不眠症の原因には、おもに次の5つがあります。
生活習慣や睡眠時の環境は、不眠症を引き起こす原因の一つです。たとえば日勤と夜勤が交代であるような働き方をしていたり、騒音や明かりによって眠りづらい環境になっていたりすることが原因となります。体に合わない枕や布団、暑すぎたり寒すぎたりする気温も睡眠を妨げる要因です。
翌日に大事な会議や試験を控えていたり、遠足やライブなど楽しみにしているイベントがあったりすると眠れなくなることがあります。不安な気持ちや神経の高ぶりが睡眠を妨害してしまうのです。
薬が不眠症の原因となることもあります。市販の鎮痛薬や風邪薬などに含まれているカフェインは、覚醒作用があるため睡眠を妨げることでよく知られている成分です。コーヒーや緑茶などにも多く含まれているので注意しましょう。また、寝る直前に食事をすると消化のために胃が活発に動くため、よくありません。アルコールは眠りの質を悪くし、喫煙は脳を覚醒させてしまいます。
咳が止まらない、体に痛みやかゆみがあるといったものも眠りを妨げる原因です。前立腺肥大症や過活動膀胱などにより夜間に尿意を来すことで、途中で起きてしまうこともあります。このほか、心臓病による息苦しさやレストレスレッグス症候群による足の不快感なども不眠症の原因となる代表的な病気です。
うつ病や統合失調症によって不眠の症状が出ることもあります。しかし、これらの病気になっていることを自覚しておらず、睡眠の質が悪いと悩みを抱えている方も少なくありません。
不眠症の症状は、大きく4つにわけられます。
寝ようと思ってもなかなか寝付けない症状です。目をつぶったまま何時間も布団やベッドの上で過ごすことになり、時間だけが過ぎていくのでつらい思いをすることでしょう。寝付けない影響で睡眠時間が短くなり、寝不足になってしまうこともあります。
眠りについた後に途中で目が覚めてしまう症状です。高齢者でよく見られます。何度も目が覚めるため、寝た気がせず疲れが取れないといわれる方も多いです。
予定していた時刻よりも早くに目覚めてしまう症状です。こちらも高齢者でよく見られます。
寝付きもよく途中で起きることもありませんが、起きた後に疲れが残っていたりぐっすり眠った感じがしなかったりなどの症状が起こるものです。眠りが浅くなっているため、熟睡感が得られません。
不眠症を治療するためには、不眠となっている原因を取り除くことがまずは大切です。原因がわかっている場合は、そちらの治療をまずは始めましょう。患者さんの状態によっては、薬を使った治療が行われることもあります。睡眠薬は種類によって持続時間が異なることが特徴です。入眠障害のみがある方には持続時間が短いものを、中途覚醒がある方には少し長めに効くものなど症状に合わせて睡眠薬を使っていきます。睡眠と関わりのあるメラトニンというホルモンに関与して睡眠リズムを作る薬や、覚醒システムを抑えることで眠りやすくする薬なども最近では使われるようになりました。このほか、眠りやすい環境を自分で作ることも大切です。
不眠症の方のなかには、通院が困難な方もいるでしょう。ほかの病気があって外になかなか出られない方、加齢による体力低下や認知症で外出が難しい方など、いろいろな事情を抱えている方がいるかと思います。
もし不眠症の治療をしたいのに通院できずお困りでしたら、在宅医療を検討してみてはいかがでしょうか。地域相談支援センターや保健所などの公的機関に在宅医療について相談することで、患者さんに合ったサービスや医療の提供を受けられます。