医療法人社団 心翠会
精神科・心療内科・内科・訪問診療

引きこもり

引きこもりとは

引きこもりとは学校や仕事、家庭外での交流を避けて家にとどまり続けている状態のことです。厚生労働省の「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」では、原則6か月以上にわたって家庭内にとどまっている場合を引きこもりと定義しています。

「引きこもり」という病気があるわけではありませんが、家庭の外に出られない方のなかには強迫性障害や幻覚や妄想があるなど精神疾患を抱えている方が少なくありません。学生時代に不登校だった方が引きこもりになったり、外に出られないためにニート状態になったりしている方もいます。

20歳から49歳までの1,660名を対象に平成16年から3年間にわたって行われた「こころの健康についての疫学調査に関する研究」では、引きこもりの経験がある方の割合は1.2%、引きこもりが始まった平均年齢は22.3歳であることがわかりました。子どもや青年においては、日本の総世帯のうち0. 5%に引きこもりの方がいるといわれています。

また、2019年に内閣府によって行われた調査では、40歳から64歳の方のうち引きこもり状態にある方が全国に61.3万人いるという推計が出されました。これらの結果から、年代を問わず引きこもりの方がいることがわかります。

引きこもりの原因

引きこもりになったきっかけを内閣府が調査したところ、以下のような回答が得られました。

このほか、精神疾患が原因で引きこもりになっている方もいます。引きこもりの原因となりやすい疾患としては、次のものが代表的です。

ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」では、原則として統合失調症の陽性あるいは陰性症状にもとづく引きこもり状態は除外するとされています。

しかし、統合失調症と診断される前の段階の方が引きこもりになっているケースもあることから、原因となる精神疾患に統合失調症も含まれているのです。

引きこもりの症状

引きこもりの方では、家から出ないという基本的な症状のほかに、次のような状態が見られることがあります。

誰とも関わらない外出はできる

1人で買い物に行き、誰と会うことも話すこともなく帰ってくることならできるという方は多くいます。引きこもりだからといって、まったく外に出ないわけではないのです。誰かとつながることがなければ、外出はできます。

生活が昼夜逆転する

太陽の光を浴びる機会が少なくなるため、体内時計が乱れて昼夜逆転することがあります。あえて周りが寝静まった夜に活動を開始することで他者との交流を最小限にし、自分にとって生活しやすい環境にしている方もいるようです。

イライラしやすくなる

引きこもりになっていることを自分自身で責めたり、悩みや思いを誰にも打ち明けられずにストレスを抱えたりして暴力的になることがあります。

同じ行動を何度もくり返す

強迫性障害が原因の場合、何度も手を洗ったり戸締まりを確認したりという行動が見られやすいことが特徴です。無意味だとわかっていても同じ行動をくり返してしまいます。

引きこもりの治療

引きこもりを治療するには、家族への支援や個人療法、集団療法や薬物療法などを行うことが基本です。

家族への支援

ご家族の方を通し、引きこもりになったきっかけとして何が考えられるのかをヒアリングします。会話の内容から引きこもりの背景に精神疾患が隠れていないかを見つけることも大切です。引きこもりの当事者とご家族がどう向き合うべきかなどのアドバイスも行います。

個人療法

個人療法とは、引きこもりの当事者を対象に行う精神的な治療のことです。どのような治療を行うのかは医療機関や支援機関によって異なりますが、自我の回復を促すことが大きな目標となります。

集団療法

家族以外の方と関わる機会を設けることで、集団と交流することへの抵抗感をやわらげる治療です。デイケアやフリースクール、精神保健機関などで受けられます。

薬物療法

引きこもりそのものを薬で治すことはできません。しかし、引きこもりの背景に精神疾患がある場合は、薬物治療も候補になります。

必要な人に、必要な医療を

引きこもりの当事者が自ら医療機関を受診するのは、難しいことが多いでしょう。ご家族に引きこもりの方がいる場合、暴力的な態度を取られるために受診を促せないこともあります。

しかし、外に出られないからといって引きこもりの治療を諦める必要はありません。在宅医療を受けることで、自宅にいながらでも治療ができます。

在宅医療を希望する場合、まずは地域相談支援センターや保健所といった公的機関に相談しましょう。そうすることで、その人に合った援助や医療の提供を受けることが可能です。

医療法人社団心翠会では、ご本人およびご家族が困っていながらも通院が困難な方を対象に、精神科医療を基盤とした在宅医療を行っています。