医療法人社団 心翠会
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PTSD(心的外傷後ストレス障害)

PTSDとは

PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは、生死に関わるような強い体験をしたことにより、時間が経過した後も当時の様子がフラッシュバックして不安や緊張を感じてしまう状態のことです。PTSDは決して珍しい病気ではありません。厚生労働省によると日本人の約1.3%、つまり100人に1人以上の方がPTSDを抱えているといわれています。

PTSDの原因

以下のような体験は、PTSDを引き起こす原因となりやすい代表的なものです。

これらのような強い刺激が原因となり、時間が経っても当時の記憶がトラウマのように自分の意志とは関係なく思い出されてしまうのです。

2011年3月11日に起きた東日本大震災では、その後にPTSDを発症した方が多く見られました。宮城県のとある病院で震災後ストレス外来を受診していた患者さんのうち、12.7%がPTSDを発症していたのです。

(参考:東日本大震災被災生徒の PTSD 症状と抑うつに及ぼす心理的要因の影響
https://www.jstage.jst.go.jp/article/stresskagakukenkyu/28/0/28_66/_pdf

まるでその当時の現場にいるかのような恐怖感や無力感を感じるため、人によっては生活に支障が出てしまうこともあります。PTSDとなるのは、なにも自分が直接強い刺激を受けた場合だけではありません。自分自身ではなく、周りにいる方が死の恐怖に直面している状況を目撃した場合にも発症する可能性があります。

刺激の強い体験をした後に1か月以上経っても生活の妨げとなるような症状が出ている場合にPTSDの診断がつくことが一般的です。ただし、この診断基準を満たしていなくても、PTSDの症状が出ることで生活へ支障が出ている場合は治療の対象となる場合があります。

PTSDの症状

PTSDの症状は、大きく次の4つにわけられます。

〈侵入症状、再体験症状〉

まるで死を感じるような強い刺激を受けたそのときの時間に引き戻されたかのように、当時の記憶が何度も思い出される症状です。当時の様子をただ思い出すだけでなく、再び同じ体験をしているような感覚におちいります。

普段の生活を送っているときになにかきっかけがありフラッシュバックすることもあれば、悪夢として症状が襲ってくることも少なくありません。侵入症状や再体験症状が起こるきっかけは人それぞれです。

PTSDの原因となる体験と似たような環境だったり、記憶を思い出させるような断片的な状況が症状を引き起こすことがあります。

〈回避・麻痺症状〉

回避・麻痺症状とは、記憶を思い出すきっかけとなりやすい場所や状況を避けたり、感情が極端に鈍感になることにより周りで起こっていることを人ごとのように感じたりすることです。

たとえば事故にあった方なら外出を避けるようになり、性的被害にあった方は異性との関わりをもたなくなったりします。これは、過去の経験や記憶から自分を守るために起こる自然な反応です。自分が体験した記憶がはるか遠い昔のように感じることもあります。PTSDの症状が出るのを恐れるあまり、引きこもりがちになってしまうことも多いです。

〈認知と気分の異常〉

認知と気分の異常とは、否定的な感情が強くなったり、周りへの興味関心がなくなってしまう状態を指します。興味関心がなくなることで生活に楽しみを見いだせなくなったり、幸福感や愛情を感じなくなることで人付き合いができなくなったりなどはよく見られる症状の一つです。「自分のせいでこんなことになったんだ」と罪悪感を覚え、自分を過度に責めてしまう方もいます。PTSDがきっかけでうつ病を発症する方も少なくありません。

〈過覚醒症状〉

過覚醒症状とは、常に気持ちが高ぶったような状態が続き、ドキドキしたり物音に過剰に敏感になったりする症状のことです。少しのことでイライラしやすくなり、感情を抑えきれず怒りを爆発させてしまうこともあります。

PTSDの治療

PTSDの治療は、トラウマとなる刺激の強い体験は過去のものであり、現在も引き続き起こっているものではないことを患者さんに理解してもらうことが重要です。治療が遅れるとうつ病や不安障害、アルコール依存症や摂食障害などを起こすこともあります。PTSDは自然に治ることもありますが、1年以上も症状が続く慢性化した状態になる可能性もあることから、早めの治療を心がけることが大切です。治療法には薬物療法と心理療法の2つがあります。

〈薬物療法〉

抗うつ薬としても使われるSSRIと呼ばれる薬はPTSDの治療にも有効です。脳内のセロトニンの濃度を高めることで、気持ちを前向きにしうつ症状を緩和します。不安が強いときに頓服として抗不安薬を使うケースもありますが、依存性を生じる可能性があるため長期にわたる連用は推奨されていません。

〈心理療法〉

心理療法の一つである認知行動療法は、何が原因でPTSDの症状が続いているのかに注目し、気持ちの整理を促す治療法です。なかでも、持続エクスポージャー療法と呼ばれるものがよく行われています。症状が出るきっかけとなる刺激に少しずつ触れていき、「刺激に触れても大丈夫だった」という経験や安心感を得てもらうことで治療を行っていくものです。

必要な人に、必要な医療を

このように、PTSDでは薬物療法や認知行動療法がおもに行われていきますが、なかには「治療を受けるために外出するのがつらい」と感じる方もいるかと思います。PTSDの方に限らず、精神的な病気を抱えている方は外に出ること自体が難しい方も多いものです。

そのような方は、在宅診療の利用を検討してみてはいかがでしょうか。自宅に医師や看護師、作業療法士などが直接伺うため、患者さんは一歩も外に出る必要がありません。

まずは、地域相談支援センターや保健所といった公的機関に相談するとよいでしょう。専門機関を紹介してもらうことで、個々のケースに合った援助や医療の提供を受けることが可能です。

医療法人社団心翠会では、ご本人およびご家族が困っていながらも通院が困難な方を対象に、精神科医療を基盤とした在宅医療を行っています。