医療法人社団 心翠会
精神科・心療内科・内科・訪問診療

てんかん

てんかんとは

てんかんとは、脳の過剰な興奮によって意識障害やけいれんなどを起こしたりする病気のことです。てんかん発作にはいくつか種類があり、激しくけいれんを起こすこともあれば、ある動作を何度もくり返したり突然ぼーっと宙を見つめて動かなくなったりするなど、さまざまな症状が見られます。

1,000人に5~8人の割合で発症していることから、そこまで珍しい病気ではありません。日本では合計60~100万人の患者さんがいると推定されています。基本的に3歳までに発症することが多いのですが、近頃では高齢者が脳血管障害によっててんかんを起こす例も増えてきました。

てんかんと診断するためには、問診をしたり脳波のチェックやMRI検査などを行ったりすることが一般的です。どのような症状が出ているのか、本人や周りから聞くことで発作が本当にてんかんによるものなのかを判断します。てんかんの治療は長期にわたり行われるため、最初の診断が非常に大切です。

てんかんの症状の重さは、人によって大きく異なります。成人になるころには完治してしまう方もいれば、何度も発作を起こして脳の機能に影響が出てしまう方もいるため、正しい治療を行っていくことがとても重要です。

てんかんの原因

てんかんは、脳にある神経細胞がなんらかの原因によって過剰に活動することが原因です。しかし、なぜ神経細胞が過剰に活動するのかについては、あまりわかっていません。

脳の神経細胞は、常にさまざまな情報を処理しています。目や耳、皮膚などから得た情報は、すべて神経細胞を通じて脳に伝達されているのです。また、脳が正常に働いて指令を出すことで私たちは体を思い通りに動かせます。

しかし、脳内で神経細胞が過剰に活動を始めると、脳の機能がうまく働くことができません。すると、脳が情報を受け取ったり指令を送ったりすることができなくなるため、体の動きをコントロールできなくなりてんかんの症状が起こるのです。

てんかんのうち、原因が明らかなものを「症候性てんかん」、原因が不明なものを「特発性てんかん」と呼びます。症候性てんかんが全体の約2/3を占めていることから、多くは原因が特定されていないのです。

特発性てんかんの原因としては、おもに次のものが挙げられます。

てんかんの原因そのものを取り除くことは残念ながらできないため、発作が起きないように薬でコントロールしていくことが一般的です。

特発性てんかんのほかに、症候性てんかんと呼ばれるものもあります。特発性てんかんとは違い、てんかんを発症する原因が分かっているものです。症候性てんかんを発症する原因としては、次のものが挙げられます。

おもに、なんらかの原因によって脳が障害を受けた場合に起こることが特徴です。

大脳の働き

大脳は、人間の体を複雑に動かす働きをする部位です。大脳はさらに、いくつかの部位にわかれています。

前頭葉

手や足など、体を動かす指令を出す部位です。思考や学習、理性などにも関わっています。

頭頂葉

皮膚や耳から入ってくる情報を処理する部位です。空間を認識する働きもあります。自分自身が空間に対してどのように存在しているかを認識するのです。体が傾いているのか真っ直ぐなのかを把握する働きもあります。

後頭葉

目から入る情報を認識している部位です。色や形、奥行きが動きなどを認識します。

側頭葉

耳から入る情報を認識している部位です。耳から入ってくる情報を受け取り、音や言葉を理解します。

てんかんの症状

てんかんによって起こる発作は、大きく部分発作と全般発作の2種類にわけられます。

〈部分発作〉

神経細胞の興奮が脳の一部でのみ起こる発作のことです。部分発作は、さらに単純部分発作と複雑部分発作にわけられます。

単純部分発作

意識が保たれたまま起きる発作です。吐き気がしたり目がチカチカしたり、手足が突っ張ったような状態になったりします。発作が始まってから終わるまで意識があるため、てんかん発作を起こしていることに周りが気づかないケースも少なくありません。子どもが「体がなんか変になった」と親に訴えたことで、はじめててんかんに気づく場合もあります。

複雑部分発作

意識の消失が見られる発作です。突然ぼーっとしたまま動かなくなり、フラフラしながら歩き回ったりします。同時に口をモグモグさせたり手足をもぞもぞと動かすような動作が見られることも特徴です。

〈全般発作〉

全般発作は、脳の広い部分で神経細胞の過剰な興奮が起こるものです。さらにいくつかの種類にわけられます。

強直間代(きょうちょくかんたい)発作

全身にけいれんが見られ、意識を失う発作です。全身が固まったようになり細かなけいれんを起こし、手足の突っ張りが見られます。

欠神(けっしん)発作

一時的に意識がなくなる発作です。急に意識がなくなるため、周りから「話を聞いていない」「集中力がない」と思われてしまうことも多くあります。意識の消失とともに、まぶたがピクピク動いたり眼球が上のほうに寄ったりなどの症状も同時に見られることが多いです。

ミオクロニー発作

全身もしくは体の一部が一瞬だけピクっとなる発作です。症状が一時的なもののため、発作が起きていることを自覚していない方も多くいます。なかには転んだり持っているものを落としてしまうほど強く発作が起きることもあります。

脱力発作

全身の力が抜けて崩れ落ちるように倒れる発作です。数秒ほどで回復するため、てんかん発作だと気づかれないこともあります。このように、てんかんは症状によって分類がされていますが、必ずしもどれかに当てはまるわけではありません。明確な分類が難しい患者さんもいます。

〈てんかん重積状態〉

てんかん重積状態とは、発作が長く続いたり短い発作が繰り返し起こったりする状態のことです。発作が起きている間、意識はありません。5~10分以上にわたり発作が続く場合は、てんかん重積状態と診断されます。命に影響がある場合もあるため、適切な治療をすぐに行うことが大切です。

けいれん発作との違い

けいれんは体の筋肉が無意識に収縮し、手足や体が動く発作性の運動症状のことです。高熱や感染症、電解質異常、薬物、外傷や低酸素脳症などが原因で起こります。

一方でてんかんは、脳が原因で起こる筋肉の収縮のことです。けいれんなのかてんかんなのか判断がつきにくい場合もあるため、しっかり見極めて治療を行う必要があります。

てんかんの治療

発作が起きないよう抗てんかん薬を使って治療を続けていくことが基本です。てんかん発作の種類に応じて薬を使い分け、発作の頻度を見ながら患者さんに適切な治療を行います。60~70%の患者さんは、抗てんかん薬によって発作のコントロールが可能です。薬を使ってもうまくコントロールできない場合は、病変を取り除く外科的な治療が行われることもあります。

治療を終了する目安は、状況によりさまざまです。小児の場合、発作が起きない期間が2年以上続くことが治療を終了する一つの目安となります。成人の場合は車の運転や仕事などにも影響が出るため、慎重な判断が必要です。

必要な人に、必要な医療を

てんかん発作は突然起こるため、日常生活に影響が出ることもあります。そのため、抗てんかん薬を使って発作が起きないようにしっかりコントロールしていくことが大切です。

とはいえ、いつ起こるかわからない発作に不安を覚えて病院に足を運べない方もいるのではないでしょうか。また、高齢でほかの病気もあるため通院が難しい方もいるでしょう。そのような場合は、在宅医療の利用を検討してみてください。

まずは地域相談支援センターや保健所といった公的機関に相談することで、その人に合った援助や医療の提供を受けることが可能です。

医療法人社団心翠会では、ご本人およびご家族が困っていながらも通院が困難な方を対象に、精神科医療を基盤とした在宅医療を行っています。