医療法人社団 心翠会
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更年期障害

更年期障害とは

更年期障害とは、女性ホルモンや男性ホルモンが減少することで起こるさまざまな症状のことです。イライラや発汗、めまいなど起こる症状は人それぞれです。更年期障害といえば女性で起こるイメージが強いかもしれませんが、男性でもなることがあります。男性は女性に比べて、ホルモンバランスの影響で体調が変化することをご存知の方があまりいません。また、男性は女性よりも症状がゆるやかに出てくることが多いため、更年期障害になっていることに気がつかず「近頃なんだか調子がよくない」と悩まれている方もいます。

更年期障害の明確な診断基準は今のところありません。どのような症状が出ているのか、いつ頃から気になるようになったのかなどに加えて、女性の場合は月経周期などもあわせて総合的に診ていき更年期障害かどうかを判断します。症状の程度をスコア化し、点数を参考にする場合もあるでしょう。更年期障害ではなくうつ病や不安障害などの可能性もあるため、慎重な判断が必要です。

月経が起こる仕組み

更年期障害が起こる原因について理解を深めるためには、月経が起こる仕組みに関する知識が必要です。卵巣からは、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンが分泌されています。

エストロゲンは子宮内膜を厚くし、受精卵が着床しやすくなるようにするホルモンです。プロゲステロンは、受精卵が着床しやすい環境を作ります。エストロゲンによって子宮内膜が厚くなると、下垂体から卵胞刺激ホルモンや黄体形成ホルモンが分泌され排卵が起こります。

排卵が起こった後、プロゲステロンにより着床しやすい環境が作られますが、ここで受精しなければ子宮内膜が剥がれ落ちて月経が起こるのです。更年期障害が起こる前までは、このようにエストロゲンとプロゲステロンがバランスよく働いています。

更年期障害になる原因

〈女性が更年期障害になる原因〉

女性は更年期に入ると、卵巣機能の低下にともなって急激にエストロゲン(卵胞ホルモン)の量が減少します。更年期障害は、この急激なエストロゲンの減少が原因です。閉経する前後の約5年間、合計約10年間を更年期と呼んでいます。女性が閉経する平均年齢は50歳ごろといわれているため、45歳から55歳までが更年期となる方が多いでしょう。更年期に入ると、エストロゲンを分泌するように脳がいくら指示を出しても十分に分泌されません。どれだけ指示を出しても分泌されないため、脳が混乱を起こしてほてりやイライラなどの症状が起こってしまいます。

このほか、心理的な要因や環境要因も更年期障害の原因です。ホルモンバランスが乱れることに加えてこれらの因子がプラスされることで更年期障害になります。

〈男性が更年期障害になる原因〉

男性の更年期障害は、LOH症候群や加齢性腺機能低下症とも呼ばれています。女性と同様にホルモンが減少することが原因です。男性ホルモンの一つであるテストステロンは、40代頃から徐々に分泌量が減少します。テストステロンは思考を前向きにしたり、やる気を出したりするのに必要なホルモンです。そのため、分泌量が減少することで気分が落ち込んだり集中力が低下したりします。

更年期障害の症状

女性と男性とでは、同じ更年期障害でも見られる症状が異なることがあります。どの症状がどれくらいの強さで出るかは人によってさまざまです。更年期障害の症状は、血管の拡張と放熱に関する症状、そのほかの身体症状、精神症状の3つに大きく分けられます。

〈女性の更年期障害で見られる症状〉

【血管の拡張と放熱に関する症状】
【身体症状】
【精神症状】

女性の更年期障害の症状には、大きくわけて身体症状と精神症状の2種類があります。じっとしているのにのぼせて暑くなったり、周りは涼しそうな顔をしているのに自分だけ異常なほど発汗したりなどが代表的な症状です。ちょっとしたことでイライラしてしまったり、なかなか寝付けなかったりなどもよく見られます。閉経すると5年ほどで症状が自然に落ち着いてくることが多いでしょう。しかし、人によっては約10年もの期間を更年期障害とともに過ごすことになります。そのため、症状がつらい方は早めに治療を受けることが大切です。

〈男性の更年期障害で見られる症状〉

【血管の拡張と放熱に関する症状】
【身体症状】
【精神症状】
【性機能症状】

男性の更年期障害では、身体症状と精神症状に加えて性機能症状が見られることが特徴です。EDや性欲低下は年齢を重ねることで自然と起こるものですが、更年期障害によっても起こるため注意しましょう。40代を過ぎると誰にいつ更年期障害が起こってもおかしくありません。女性と違って治療しなければ症状がずっと続いていきます。

更年期障害の重症度

更年期障害は、女性の場合、エストロゲンの急激な減少が原因です。更年期を迎えるとすべての女性でエストロゲンの量は減少します。しかし、すべての方で更年期障害が見られるわけではありません。40代に入るころにはすでに更年期障害の症状を自覚している方もいれば、50代に入っても特別な治療を行うことなく過ごしている方もいます。

また、更年期障害が起こったとしても症状の程度は人それぞれです。ほとんど症状が出ない方がいる一方で、日常生活に支障をきたすほどつらい症状に悩まされている方もいます。

更年期障害の治療

更年期障害は、終わるまでひたすら辛抱して待たなければいけないと思われている方が意外と多いものです。実際に厚生労働省が調査したデータを見てみると、更年期障害の症状を自覚していながら受診してない方は男女ともに80%前後もいます。しかし、更年期障害は治療が可能です。我慢し続ける必要は決してありません。

〈女性の更年期障害の治療法〉

代表的な治療方法には、次のものがあります。

ホルモン補充療法は、薬を使ってエストロゲンを補充する治療です。偏頭痛や血栓リスクがある方には使えない場合もありますが、のぼせや動悸、息切れや発汗などに対して高い効果が認められています。当帰芍薬散や加味逍遙散、桂枝茯苓丸などの漢方薬もよく使われる薬です。心理的な要因が大きく関与して症状が出ている方には、心理療法が行われることもあるでしょう。不安感やうつなど精神症状が強い場合は、抗うつ薬や抗不安薬なども選択肢となります。

また、食事療法や運動療法を行うこともあるでしょう。女性ホルモンと似た働きをすると言われている大豆イソフラボンを積極的に摂り、バランスの良い食事をして野菜や果物もしっかり食べるようにします。適度に運動を行い、ストレスを発散して落ち込んだ気持ちを前向きにすることも効果的です。

〈男性の更年期障害の治療法〉

男性の場合は、次のような治療が行われることが一般的です。

男性ホルモンの量が低く、症状が強めに出ている方にはテストステロンを補う治療が行われます。保険適用されているのは、現在のところ注射剤のみです。不眠やのぼせ、不安感には加味逍遙散、頭痛やEDには補中益気湯などの漢方薬が用いられます。性機能の低下が著しい場合は、ED治療を行うのもよいでしょう。そのほか、精神状況に応じて抗うつ薬や抗不安薬などを使い症状を落ち着かせる治療も行われます。

気分が落ち込みがちな方は、運動を行うのもおすすめです。体を動かすことで気持ちを前向きにするセロトニンやドーパミンなどが分泌されます。

必要な人に、必要な医療を

更年期障害は、人によっては日常生活に支障が出るほど症状が強く出ることもあるものです。症状を自覚している40~49歳の方のうち、約30%は日常生活に影響があると感じています。

「治療はしたいけど外に出るのがしんどい」と感じる方は、在宅での治療を検討してみてはいかがでしょうか。

受診するために外に出るのが難しいと感じる場合は、まず地域相談支援センターや保健所といった公的機関に相談してみてください。そうすることで、個々のケースに合った援助や医療の提供を受けることが可能です。

医療法人社団心翠会では、ご本人およびご家族が困っていながらも通院が困難な方を対象に、精神科医療を基盤とした在宅医療を行っています。